■肩関節前方脱臼(コッヘル法)

*備考…肩関節脱臼は全外傷性脱臼の50%を占める
*肩関節脱臼の多い理由…骨頭に対し関節窩の面積が小さい (1/3~1/4)また関節包が弱い
*最も多い脱臼…烏口下脱臼(大胸筋が強い為前方が多い)

*発生機序は…過度の外転、伸展、外旋力強制により発生
*症状…上腕軽度外転30° 内転、上腕骨頭は烏口突起下触知
*合併症…最も多いのは上腕骨大結節骨折、関節窩辺縁部骨折、腱板損傷 *鑑別診断→上腕骨外科頚外転型骨折
*整復法…コッヘル、ヒポクラテス、スティムソン、クーパー、Etc.

肩関節前方脱臼01

軽度外転位の上腕を長軸方向に末消牽引(5秒程度行なう)
肘関節は直角または鋭角になること 
末梢牽引しながら、側胸壁に接近させる


肩関節前方脱臼02

肩関節前方脱臼03

末梢牽引を持続しながら
上腕を外旋する(上腕骨に充分外旋力が働いていること)
(前腕を回外しながら外旋する)


肩関節前方脱臼04

牽引を緩めず外旋位のまま
前胸壁を滑らせるよう肘を正中面に近づける(内転)


肩関節前方脱臼05

次いで、前方挙上(屈曲)する
上腕が前胸壁から離れないように最大屈曲時にて整復


肩関節前方脱臼06

患側手掌が顔の前を通り
健側にくるように内旋する
(内旋の時、肘部を支点として行なう)


肩関節前方脱臼07

整復後の確認→患部の触診と神経、血管の異常なしで整復完了
固定→肩関節軽度屈曲、内旋位で2~3週間(麦穂帯)


その他の整復法

クーパー法(槓杆法)

患者は座位とし、術者は後方から膝を腋窩に入れ、片手で肩峰突起部を圧縮し、他手で上腕を 把持し内下方に圧迫する

これで骨頭は外方牽引され、また術者の膝頭を槓杆の支点として 外方に出る

(仰臥位で踵骨を用いた場合はヒポクラテス法となる)


シモン法(振子法)

患者は仰臥位で、術者は患側の上腕下端と腕関節部を把持し患者の肩甲骨が浮き上がるまで挙上する
同時に患者の体重と動揺を利用し調子をとりながら時計の振子のように振って整復する


モーテ法(挙上法)

助手は脱臼した上肢を強く牽引しながら徐々に挙上する
術者は骨頭部に直圧を加えて関節窩内に整復する